『ベルセルク』を読むということは、
“ただのダークファンタジーに触れる”なんて生やさしい話じゃない。
それはもう、「圧倒される体験」に近い。
世界観、ストーリー、キャラクター、画力……
どれをとっても濃密で重たくて、息をのむような静けさと狂気を孕んでいる。
主人公が生きてきたのは「地獄」
主人公・ガッツは、戦場で生まれ、戦場で生きてきた男。
彼の歩んできた道は、「地獄」と言っても言い過ぎじゃない。
腕を失い、片目を失い、それでも巨大な剣を振るい、
憎しみと復讐を燃料にして戦い続ける姿は、まるで“生きた怒り”。
でも、この作品がすごいのは、その怒りの奥にある“祈り”のような感情を、ちゃんと描いているところだと思う。
戦いと血の中でしか生きられないような彼のそばに、
それでも離れずに寄り添おうとするキャスカの存在。
その関係もまた、傷だらけで、綺麗ごとでは片付けられない。
『ベルセルク』は、簡単に「愛」とか「仲間」とか「希望」なんて言わない。
むしろ、そういった言葉を使わずに、それらをずっと問い続ける物語だ。
書き込みが半端ない!ページの端々にまで感じる画力の凄さ
とにかくすごいのは、その「密度」。
物語の重厚さはもちろん、三浦建太郎先生の画力が本当にとんでもない。
瓦礫の一粒、剣の光、魔物の皮膚の凹凸、
そして、キャラクターたちの“目”。
その一コマ一コマに、魂が宿っている。
マンガってこんなに情報を詰め込めるんだ、
こんなに「静寂」を描けるんだって、何度もページをめくる手が止まる。
どこを彷徨い、どこに向かうのか
私が一番胸を打たれたのは、
ガッツが「何のために生きるのか」を問い続ける姿。
戦いが終わっても、怒りが薄れても、
彼の中には、空っぽの部分がある。
その“空白”をどう埋めていくのか、
それがこの物語の本質なのかもしれないとすら思える。
『ベルセルク』は、人によっては「暴力的すぎる」と感じるかもしれない。
確かに残酷な描写は多いし、読むのにエネルギーがいる。
でも、そこを超えてきた人だけが、
この作品の持つ“静かな美しさ”に気づける気がする。
ただのバトルファンタジーでも、ただの復讐譚でもない。
これは、人間という存在そのものを描いた、魂の物語。
物語の終わりまで絶対に見届けたい作品
完結を見届けることができなかった三浦先生の無念と、
今も受け継がれながら描き続けられているガッツたちの物語。
それを思うと、やっぱり私はこの作品が好きだと、強く思う。
読むたびに、重く、そして美しい。
そんな漫画、そうそう出会えるものじゃない。
ベルセルク 1 (ヤングアニマルコミックス) Kindle版
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